個人向けの税理士はなくなるべき、という話
あけましておめでとうございます。
子供が生まれたということもあり(生まれる前から更新できてなかったですが
かなり久々になってしまいましたので、
少し攻め気味の記事を書いてみます。
個人向けの税理士って?
そもそも申告納税方式をとっているので、
最終的には独立税理士のお仕事は不要となるべきと思っています
(そこそこ規模の会社における社内税理士などは別ですが)
ただそこまでは生きている間にたどり着かなそうなので、
私の目標としては個人向けの税理士業務を無くしたいという思いがあります。
とはいえ「個人向けの税理士業務」といっても定義が少し広いのですが。
今は給与+医療費、住宅ローン位ならまあ誰でも(税理士なしで)できると思います。
まずこれから目指したいのは、税務調整のない会社(利益=所得)であれば
法人も含めて1人でやってるような事業、
例えば不動産管理会社や個人商店レベルの決算申告であれば
税理士不要という状況にしたいです。
個人向けの税理士はなくなるべき、の理由
例えばこんなところです。
・本当にアドバイスすべきことに注力できる
※特に最近の消費税は複雑なので。
・税金も含めた資金繰りを経営者が自らできる
ここでお伝えしたいのは、薄利多売ということではなく、
高付加価値で勝負したいという方向性です。
前者の方向性で行くと税理士資格としての価値、下がっていく一方ですので。
そのためにできること① システムに頼る
では、なぜ今「個人向けの税理士業務」というニーズがあるのか、
それを払しょく・克服するためにできることを考えてみます。
まずは取っ掛かり。税金は難しいという考えをなくしたい。
よっぽど経営のほうが難しいと思います。
なので、誰でもできる環境づくりとしてシステムに頼るというのは1つです。
freeeの法人税申告書は決算書から反映されるのでよさそうで、
地方税もできるというのがポイント高いです。
※そもそも地方税の申告書分かりづらい、もう少し事業規模ごとに様式が違ってもいいのでは?
(1つの様式にさまざまな業種のものを詰め込みすぎ、まぁ太陽光発電事業のせいでもあるが、
だったら課税方法を見直しては?…というのは別として笑
今回はこの辺りで。
次回は別論点でできることを検討していきたいと思います。
今年もよろしくお願いいたします。
インボイス制度が迫ってくる 簡易課税制度の2年縛り
今回の記事はこちらの続きになります。
簡易課税制度、カンタンに思えるが…
前回、簡易課税制度であれば納税額の計算はカンタンですとしました。
しかし、カンタンな制度には裏があるのが税務あるある。
特に注意しなければならないは次の二つです。
還付は絶対にない
以下の計算方法の理屈上、還付を受けることができません。
{(売上)マイナス(売上×みなし仕入率)}×税率=消費税納付額
つまり、売上×(100%△みなし仕入率)×税率=消費税納付額であり、
みなし仕入率が100%を超える事業なんてないですからね。
原則の計算方法であれば
{(売上)マイナス(仕入)}×税率=消費税納付額
なので、売上<仕入であれば、計算結果がマイナスで、
その分は還付を受けることができます。
そのため、赤字になりそうだったり、設備投資予定に注意する必要があります。
(原則であれば、設備投資において払った消費税もマイナスできます)
事前届出制、さらに2年縛り
さらに厄介なのは届出です。
簡易課税制度は特例的な制度なので、「今年から始めたい」という場合には
昨年末まで(始める年の前年末まで)に、簡易課税制度を始める旨の
届出書を提出しないといけません。
(会社であれば適用しようとする事業年度開始の日の前日まで)
また「今年は赤字になったから簡易課税やめます」というのも
やめようとするの年の前年末までに、
簡易課税制度をやめる旨の届出書を提出する必要があります。
つまり決算になって「今年は赤字になったから簡易課税やめます」は通用しない。
さらに、やめる旨の届出書は、
少なくとも簡易課税制度を始めてから2年間は継続
してからでないと、提出することすら認められません。(いわゆる2年縛り)
なので、来年以降の損益を予測して、
あらかじめ届出を出す必要があるか、十分に検討する必要があるのです。
「やめない」限り、永久に簡易課税
↑の留意点の続きとして、簡易課税制度を始める旨の届出書の効果は
やめる旨の届出書を提出するまで残ること。
大昔に出していた簡易課税制度の届出のせいで、
投資にかかる消費税を損する、というケース、結構あります。
(税理士も代替わりや顧問変更などで気づきづらい点でもあります)
制度の仕組みをわかっていれば有利になったり手軽になったりするのですが、
安易に「簡易課税制度」を受け入れないようにしましょう。
それでは。
インボイス制度が迫ってくる 簡易課税制度はカンタンなのか?
またまたですみませんが、インボイス制度がらみです。
そもそもインボイス制度とは?の方は ↓こちら↓
インボイス制度での問題点 申告納税 or 消費税もらわない
細かい話は前記事を参照いただきたいのですが、
ポイントとしては、免税義務者(いままで消費税納めてない事業者)は
消費税を納める=申告をする or 消費税をもらわないことにする
のどちらを選択させられることになります。
消費税を申告しなければならない
→納税額を計算・申告書を作って提出 という新たな手間が発生するわけで。
所得税の申告書で手いっぱいな方からするとツライところですが、
消費税を払う側(買い手側)からすると、
それは何とか対応してほしいんだよな…というところもあり。
簡易課税制度とは何か
そこで税理士界隈をざわざわ…させているのが、簡易課税制度。
まずメリットとして挙げられるのは、消費税の計算がシンプルになること。
簡易課税を選択しない場合(本則課税と呼んだりします)では
{売上にかかる消費税 マイナス 仕入にかかる消費税}として計算するのですが、
「仕入にかかる消費税」という概念が結構やっかいでして。
例えば交際費は10%消費税が含まれる・8%消費税が含まれる・消費税ナシ
の3つ出てくる可能性があり、領収書をしっかり見て処理しなければならず、
経理としては処理がメンドウ。
インボイス制度が始まると上記の区分がほぼ倍になります。
(支払相手の納税義務ごとに区分する必要があるため)
そこで、簡易課税。
売上の発生原因となる業種ごとに決められたパーセント(みなし仕入率といいます)
を売上にかけたもの=「仕入にかかる消費税」とみなす方法です。
例えば町のお菓子屋さんであれば「小売業」なのでみなし仕入率は80%。
売上が税込み108万円としたら、税抜きが100万円なので、
100万円×8%-{(100万円×80%)×8%}=1.6万円 が納税額になります。
(下線部分が「仕入にかかる消費税」とみなされた金額になります。)
売上に税率・みなし仕入率をかけたら納税額が計算できるので、とっても簡単。
支払ったものの消費税は無視できます。
なのですが…というのが今回のテーマ。
でしたが、ちょっと長くなりそうなので、続きは次回とします。
※しばらく、さらっと書きやすい記事が続いてしまうかもしれません。
こんなことが知りたい!などご要望などあれば、優先して記事にしますので、
コメントいただけると大変うれしく思います!!
やや閑話:消費税納税義務免除(免税事業者)制度は悪、なのか
今回の記事は前回記事とは異なる流れのひとくちメモのようなものです。
予めご了承ください。
※インボイス制度の概要などはこちらご参照ください。
今回は制度の詳細については割愛させていただきます。
インボイス制度、もうすぐであと1年です。
唐突ですが、税理士界隈で話題になっているこの件について考えてみました。
インボイス制度と免税事業者
ざっくりインボイス制度で何が問題になるかといえば、
免税事業者からの仕入税額控除はマイナスできない
→免税事業者への支払いは減らしたい
&登録事業者を確認する手間が生じる、ということ。
この点、免税事業者がいなくなれば…
つまり、免税事業者制度が無くなれば…
という話が、にわかに盛り上がっております。
免税事業者がいなくなるメリットと問題点?
何故かといえば、免税事業者がいなくなる
⇒課税仕入なら、全部仕入税額控除をとれる世界観となるから。(一部例外はありますが)
登録番号が正しいものか?本当に登録事業者なのか?
なんてチェックは必要なくなり、
あんた免税事業者?じゃあ値引きしてよ~という話も一切なくなります。
会計のシステム改修や、消費税の理論値チェック方法も変えずに済みます。
デメリットとしては、事業者は全員申告となる
⇒売上0円の人も申告義務?という点。
税理士がついていればよいですが、
売上0円でも間違って還付申告する案件が大量にありそうな予感です。
そもそも消費税複雑すぎるよね問題もあります。
免税事業者と簡易課税制度はどっちも廃止してほしいですね。(どうせやるなら)
⇒それか課税売上割合制度をもう少し合理的にカンタンにできないのか?
簡易課税制度はカンタンにしすぎ、現行法はメンドウすぎる。
それに一括比例配分方式が原則、個別対応方式が例外でよいのでは?
(まだ一括~のほうが分かりやすいし、実態にも即している)
と、少しマニアックになってきたので話を少し戻します。
インボイス制度、どこまでやるか?
ホンネをいえば、登録番号のチェック機能ぐらい、
国税側で用意してくれという話です。
なんで納税者側が手間(かお金)をかける必要があるのか…?
まぁだいぶ前から決まってることなので。やるしかないのですが。
あとは中小企業レベルであれば、
きわどいタクシー代や飲食店の消費税は無視する
orリスク負いで仕入税額控除してしまう、でもいいのでは?という話も。
(システム等コストにもよりますが)
⇒この辺りは安く・早くできる「落としどころ」を探す1年間になりそうです。
それでは。
所得税の仕組み-2 <総合課税と累進課税>為替で少しでも税金減らしたいなら?
前回の続きとして、またまた時代の流れにのっていきます。
今回はスーパー円安です。
為替と税金
為替による損益は雑所得になります。
そのため総合所得として、
給与所得など他の総合所得のものと合算後に税率をかけることになります。
※FXは分離課税(株式譲渡や上場株式配当などと同じ)なので、
これから書いていく節税方法はできないものになりますのでご注意ください。
(前回予告の趣旨に間違いがありましてすみません)
外貨使用・外貨変換…思わぬ「為替差益」に注意!
ではそもそも為替による損益とは何でしょう?
典型的は100円=1$のとき10,000円で買った100$を、
150円=1$のときに15,000円に戻すことで得られる5,000円のことを差します。
株式投資と同じ感覚ですね。
気を付けなければならないのは以下のケース。
・ドルを使う場合
・ドル→ユーロ他に転換
これらは株式投資と違って利益を確定させるという感覚がないところに
注意が必要なケースです。
例えば、100円=1$のとき100万円で買った10,000$を、
150円=1$のときに150万円相当の米国株式を買ったとします。
このとき米国株式の取得価額(原価)は150万円となって、
円→ドル変換は100万円の価値だったものが、50万円価値アップされたと考えます。
<仕訳イメージ>
ドル購入時:米国預金100万円/日本預金100万円
米国株式購入時:米国株式150万円/米国預金100万円、為替差益50万円
為替差益課税を少しでも減らす方法
利益確定タイミングを調整するという方法があります。
例えば、今年の収入>来年の収入、となることがわかれば、
今年は為替差益を発生させない(=利益確定させない)ほうがよい。
なぜかというと、雑所得は総合課税=累進課税のため。
今年の所得が1000万円、来年500万円であれば
税率差は13%あるので、50万円の為替差益であれば6.5万円の差額。
ただ気を付ける点がいくつかあります。
1つ目は損益通算後・所得控除後の金額で税率判定を行うこと。
医療費控除やふるさと納税を大量に行ったり、すでに行った人は
比較の仕方に注意しましょう。
2つ目は為替差損では調整できづらいという点。
雑所得は、雑所得としか損益通算ができないため調整効果を生み出しづらい。
なので為替では損切りは慎重にされた方が、税金的にはイイと思います。
(とはいえ損切りは投資判断としては重要ですが)
少し長くなりましたが、
所得税の仕組みのうち「累進課税」というものが税金にどう影響するか、
分かっていただけたら幸いです。
次回は間違ったときなどの罰金についてです。
所得税の仕組み 1-2 <所得の種類と計算方法>競馬の発展を考えるなら別視点のほうが。
今回はこちらの続きとなります。
一時所得と雑所得の課税の仕方について
一時所得か、雑所得かについては、競馬以外にも揉めるケースはありそうです。
今回の議論だけを見ると「雑所得にしてほしい」となってしまいますが、
実は一時所得のほうが恵まれてる部分もあります。
なぜかというと
・一時所得には特別控除(50万円)がある
・一時所得は、1/2だけ課税される
というルールがあるため。
例えば1,000万円当たったとしても、(1,000万-50万)/2=475万円のみが課税対象、
これに住民税込みの最高税率55%課税されても270万円弱。
これは「たまたま」「一時的に」もらえた1,000万円と、
「継続的に」「毎年」手に入れた200万円×5年分とでは、
長い目で見ると、前者の方が価値が低いものであると考え、
課税の面でも優遇してあげましょう、という背景があります。
(1,000万円は5年後にもう一度取得できないかもしれないですが、
毎年の200万円は、その後も概ね取得できるであろう、ということ)
そして、既に税制として優遇している分、一時所得の経費として認める範囲は
他の所得よりも非常に狭く、以下のような考えになっています。
その収入を生じた行為をするため、または、その収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限ります。
はずれ馬券は収入とは紐づいていないので「直接要した金額」に含まれない、
というのが現在の法令認識となっています。
競馬は「一時的」か、「継続的」か?
このように、その収入自体や、その収入を得るための行為が
「一時的」なものか「継続的」なものか?というところが今回の争点です。
一般的な競馬競輪「ファン」であれば、競馬競輪は「遊び」であり、
その遊び代の一部である「はずれ馬券」が経費にはならないかと思います。
(要は「やめればいいじゃん」と言われるようなレベルであれば
無理なのでは?ということです笑)
ただし競馬競輪での稼ぎを「生業」としていると認められれば、
はずれ馬券も雑所得と認められる可能性は十分にあります。
過去には競馬の予想・分析に使ったPC等々含めて経費認定されているケースもあり
実際のところ、どう判断されるのか?という点は注目でもあります。
二重課税問題は別の論点として重要
さらに「はずれ馬券」すなわちJRAの売上の一部は国庫納付となるようです。
これが二重課税なのでは?ともいわれていますが、
個人的には二重「課税」ではないと考えてはいます。
ただし「なぜ国庫納付が必要なのか」については議論の余地がある気がします。
一応↑のHPでは4分の3が畜産振興に、4分の1が社会福祉に活用となっています。
例えばこの割り振りをもっと明確に「馬主やジョッキーへの還元」など
「競馬というスポーツの発展のため」に使ってくれるような制度にするなり
理解を得られるような仕組み作りが必要なのではないでしょうか。
最後になりますが、こんな記事がありました。
とても参考になり、特に「宝くじが非課税な理由」などについては、
今回の論点にもつながるのではないでしょうか?
今回は以上です。
<次回以降の予定>
所得税の仕組み-2 <総合課税と累進課税>FXで少しでも税金減らしたいなら?
所得税の仕組み-3 <附帯税>税金に関する罰金。わざと・無視は止めといたほうが。
所得税の仕組み 1-1 <所得の種類と計算方法>競馬のはずれ馬券の考え方
最近、競馬と税金が話題になってますねー。
専門家的には、はずれ馬券が経費には「正直ならないかな」と侮っていましたが…
まったく問題点がない訳でも無いのかなとも思い、まとめてみました。
所得税は10種類の所得区分がある
所得税の計算は、まず、個人が受け取ったお金を
↓の10の区分に分けるところからはじめます・
見慣れないものもあるかと思いますが、
普通のサラリーマンは「給与所得」しかないですし、
不動産を持っていれば「不動産所得」や「譲渡所得」、
株式投資であれば「譲渡所得」や「配当所得」などコトバ通りのものが多い。
さらに医療費控除やふるさと納税は「所得の区分」とは余り関係がないので、
それ以外の所得区分は通常使わない、必要のない知識ともいえます。
所得ごとの課税の考え方
では、なぜ所得区分がこんなにあるのか?といえば
全部一緒くたにすると課税の弊害があるから、
というのが端的な答えになります。
最も多くの人がかかわる「給与所得」ですが、
これには給与を稼ぐには、これ位の経費がかかるであろうという
「給与所得控除」という規定があります。
所得税-2 共働きと1人稼ぎ 給与所得控除とは - 素朴な税務ブログ by yui好き税理士(仮)
原理原則としては、
「給与収入」から「それにかかった経費」を引いた差額に課税したい。
ただし、全国民に「それにかかった経費」を計算して申告させることは、
管理側(国税側)も大変。
なので、収入見合いで「ざっくりこれ位の経費」としましょうということです。
一方で事業をやっている方々は、
通常であれば「収支表」いわゆる決算書をつくっているわけであり
収入-経費=所得、という計算が比較的カンタンにできるため
ざっくりではなく、原則通りの課税をしているということになります。
一時所得と雑所得の違い、そして競馬はどうなる?
では競馬の払戻金は何になるのでしょうか??
ここが昨今話題となっていることの論点になります。
国税庁側は「一時所得」を主張しています。
もはや↑で一時所得の例に競馬や競輪の払戻金と書いてしまってますね笑
ポイントはふたつ。
A:営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得
営利目的であれば不動産所得、事業所得などになります。
B:労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない
一時の所得
労務や役務の対価は給与所得、資産の譲渡であれば譲渡所得となります。
ちなみに宝くじの当選金などは、
まさに一時所得の定義に当てはまるものなのですが、
別の規定により非課税になっています。
一方で納税者としては「雑所得」を主張しています。
雑所得とは「他の9種類の所得区分には当てはまらないもの」です。
年金や、いわゆる副業の収入などが当たります。
では、なぜ「雑所得」になると主張したいのか?
少し長くなりましたので、この辺りで続きは次回としたいと思います。