令和5年からはインボイス制度。消費税の納税義務判定について…の前に
今回は、納税義務判定について…と思ったのですが。
納税義務について考える前に知っておくべきことを先に書きます。
前々回、消費税納税額の計算方法については
1,000 の売上 100の仕入 の時、100 預かって 10 支払う
すなわち 100 - 10 = 90 を納税 としました。
そして消費税法の世界では、
納税義務がある者:課税事業者 納税義務なし:免税事業者 と呼びますが、
令和5年10月から、
免税事業者に対する100の仕入にかかる、消費税 - 10 の扱いが変わります。
免税事業者に「支払った」はマイナスできません!
これ、正確に言うと、令和5年10月から、
「適格請求書」(いわゆるインボイス)の発行を受けることにより、
その記載された消費税をマイナスすることになります。
しかし免税事業者は「適格請求書」に記載が必要な登録番号を取得できません。
つまり「適格請求書」をもらえない=マイナスできない、となります。
これをインボイス制度と呼んでいます。
なぜ、インボイス制度を導入するのか
この制度の導入、一見するとマイナスの要件を強くすることにより税収UPを図る、
増税措置のように思えるかもしれません。
しかし消費税を理論的に考えると、あながち間違いではないことが分かります。
以下にその理由を説明します。
まずは下図の例題で考えてみましょう。
↑の時、納税義務がある課税事業者は 90 を納付します。
(手元には 900 のキャッシュが残る)
一方、免税事業者は納税義務がありませんので
預かった消費税はそのまま収入として経理されます。
そのため免税事業者が税抜き処理をすると、90 の営業外収入が発生します。
(手元には 990 のキャッシュが残る)
これを「益税」と呼んでいます。
逆の立場、
つまり国からしたら、免税事業者に消費者が支払った 72 は
本来の消費税負担者から回収できていないことになります。
下記の日経記事によれば、
上記の仕組みで数千億円規模の金額が回収できていないことになっています…
益税とは 特例により数千億円規模が企業の手元に :日本経済新聞(※記事では簡易課税制度にも触れられておりますが、これは別の機会に。)
免税事業者の今後について
現行法上、益税収入は適法です。
極端に節税しようとしている場合には「租税回避」と言われる余地はありますが、
少なくとも違法ではありません。
ただし仮に益税収入に頼った経営となっている場合、
令和5年10月以降に取引先からこんなことを言われるリスクがあります。
「適格請求書等、発行できないんですか。
じゃあ消費税分うちの負担が増えるんで、取引先変えますね。」
「それかうちが負担しなくて良いように消費税分を値引きしてください。」
ここまでハッキリ言われるかは分かりませんが、可能性としては十分あり得ます。
つまり、令和5年10月までに下記の選択が迫られることとなります。
1.納税義務を負わない代わりに、消費税分のキャッシュフローが悪くなるか
2.面倒でも納税義務を負って、消費税分も請求するか
B to C であれば1.で問題ないかもですが、
B to B ですと先ほどのケースのように2.にせざるを得ないかもです。
この辺りを含めて、納税義務の解説を次回から書いていきます。
※2021/9/4 消費税率を10%に変更、その他若干の文言修正