消費税の基礎知識-赤字でも納税?-

 今回は、消費税の計算方法について事例を挙げながら説明します。

「利益に課税」ではない(近い)

なぜなら、法人税は課税でも、消費税は非課税・対象外となるものがあるため。

非課税と聞くと嬉しい気もしますが、消費税納付のことを考えるとややこしいことがあります。

詳細は後ほど。

 

「預かった」マイナス「支払った」

利益が「売上(収入)」マイナス「原価・費用」ということはわかりますよね。

消費税も原則は同じ。

以下、例題にて消費税納付額をシミュレートしてみます。

 例1:原則的な考え方

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税抜きで1000の売上、100の仕入れがあった場合を考えてみると、

利益は 1000-100=900 です。

実際は税込 110 支払い、1100 を受け取るので、

税抜から 10 を上乗せして支払い、100 を追加請求することになります。


これを消費税の考え方に置き換えると、

100 は国の代わりに預かったもの

10 は国に払う分を立替してもらっている(仕入先が納税する)ということで、

当社としては、100 - 10 = 90 を納税します。


この場合には、利益 900 の 10% = 80 と納税額が一致するため、わかりやすい。

 例2:給与の支払いがある場合

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給与は消費税がかからない支払の代表例です。

すなわち 100 の給与については、10 を追加で払う必要はありません。

 

例1と同様に売上は 1000 として、費用は 100 の給与だけだった場合には

利益 1000-100=900 は同じ。

ですが、現金の支払いは 1100 を受け取り、100 支払う ということになります。

そして、売上に追加して国の代わりに預かった 100 をそのまま納税する。

この場合には、利益 900 の 10% =90 とは不一致となります。


赤字でも納付になりうる

上記の続きで、こんなケースを考えてみましょう。

 例3:赤字で納付の場合

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今までの2例と異なり、

100 の売上に対して 1000 の給与が発生して 利益 100-1000=-900 と赤字です。

 

現金の動きとしては、給与 1000 支払い、 110 を受け取るのですが、

売上から国の代わりに預かった 10 は納税しなければなりません。

すなわち、10 を納税用にキープしておく必要があります。 

 

ここが「消費税非課税はややこしい」という冒頭のお話。

 消費税非課税のものとは?

厳密にいうと不課税・非課税・免税という区分がありますが、

支払いに関してはこの区分はあまり実務的には問題なく、課税or非課税と思って問題ないです。

支払非課税のものについては、毎月・毎年出てくるようなものとしては

・人件費

・住宅の家賃

・税金(印紙も含む)

・利息

・保険料

・海外への支払い、海外渡航

この辺りを気にするようにしてください。

他にも色々とありますが、フリーランスでよく出てくるのはこの辺りです。

また上記の括り方の中にも課税対象となるものがあったりします。(人材派遣料など)

金額の大きなもので不安なものがあれば、私か最寄りの税理士さんに聞いてみましょう。

 

※自宅の家賃について

オフィスを借りずに自宅で仕事しており、

自宅の家賃の一部を経費にしている人は多いです。

法人税では一定の決まりの範囲内であれば法人負担額がそのまま経費となりますが、

消費税法上では住宅の家賃は契約が居住用だと非課税となります。

(貸手側では「住宅の貸付用」としか把握できない状態のため、

賃貸料収入に対する消費税を納める必要がない決まりになっています。)

→この点については税制改正がありました。

当該契約において当該貸付けに係る用途が明らかにされていない場合

当該貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合を含む。

 

つまり「事務所用」という契約でも

住居として使用していることが証明できる状態ならば、消費税は非課税になります。

 

 

フリーランスでは人件費が出ないケースも多いと思いますが、

自宅家賃の負担は費用全体の中での割合も大きいと思います。

結果、見た目の利益以上に消費税納付になりやすいでしょう。


今後は免税事業者にもデメリットがある

さて、今までの話は<消費税の納税義務者>のお話です。

そして<消費税の納税義務者>は現状の法令では

原則として2年前の売上が1,000万円超であること。

 

ここで「じゃーうちは関係ないかな」と思った人も多いとは思います。

しかし現状の法令ではというところに引っかかってほしいのです。

 

と、長くなってしまいそうなのでいったんここで区切ります。

今回覚えていただきたいことは

「会計の利益が赤字でも、消費税納税がありうる」ということ。

特に現時点で消費税の納税義務者の方は、知っていれば、

決算前・申告前の対策もとれますので、ぜひ覚えてください。

それでは。