法人設立-2 税理士が実は知ってる?法人化の隠れデメリット
前回の続きになります。
法人化のデメリットは何か?税理士目線で考えてみます。
- 社会保険(労働保険)の調査等が厳しくなる
- 源泉徴収義務が発生
- 赤字でも(休業でも)支払う必要がある均等割
- 申告書含め、税務のレベルが格段にUP
- まとめ:個人事業主(という事業体)は、小規模であれば十分メリットがある
社会保険(労働保険)の調査等が厳しくなる
個人事業時代は、従業員2,3人レベルであれば、
そもそも事業所での社保加入は任意となっております。
(逆に加入希望の時に従業員からの同意や官庁の認可が必要です)
法人化すると、必ずと言っていいほど社保加入を促す書類が届きます。
なぜかと言うと、
・法人は常に1人以上の従業員がいると強制加入となること
・代表者は役員報酬ある限り常に1人以上の従業員とされること
↑から、強制加入となることがほとんどと考えられるからです。
源泉徴収義務が発生
個人事業主は、給与支払対象が常時2人以下(お手伝い程度)であれば
源泉徴収義務がありません。
一方で、法人であれば必ず源泉徴収義務者になります。
源泉徴収は給与・報酬などの支払側が納付義務なので、
請求側が発行した請求書に源泉徴収忘れ・請求額誤りがあったとしても、
原則として正しい源泉徴収額となるよう減額して支払う必要があります。
(請求側はお金貰う方なので、忘れ・誤りに注意すべきとは思いますが)
納付漏れ指摘時のペナルティは税金の10%と安くはありません。
また弁護士や司法書士に対する報酬も、
法人は100%源泉徴収対象となります。
あまり高額になることは無いでしょうが、メンドウではあります。
赤字でも(休業でも)支払う必要がある均等割
個人事業時代は、事業の利益が出なければ税金は当然0円。
100万円程度の利益であれば課税されません。
(他に給与等がない前提ですが)
法人には基礎控除のようなものは存在しません。
逆に、最低でも7万円の地方税均等割は赤字でも納付必要になります。
また法人での事業を休眠しよう、と思った場合でも、
理屈上は毎年7万円の納付が必要となります。
※休眠時の均等割は、場合によっては免除される可能性もあります。
詳細は法人本店所在地の各自治体までお問い合わせください。
申告書含め、税務のレベルが格段にUP
所得税の申告書は、カンタンとまでは言いませんが
決算書の読める方であれば、記載例を読めば書けるレベルとは思います。
また税務署による説明会も広く行われており、周知もされています。
法人税の申告書も、決算書から転記を行うのですが
税法用語が多く、内容を理解するのが難しいと思っています。
繰越損益金=繰越利益剰余金、納税充当金=未払法人税等、くらい
申告書に書いてくれれば理解が進むのに、と思います。
さらに法人の場合は、地方税は自力で申告・納付です。
(個人は基本的に所得税申告書のみ提出でOK、納付書も送ってくれる)
事業所が2か所以上の自治体にあるとさらに厄介に難解に。
会計用語でさえ難しいと感じる方も多いので、
キチンと税務を知りたい方にとっては高いハードル。
まとめ:個人事業主(という事業体)は、小規模であれば十分メリットがある
デメリットということは、逆にいえば、
個人事業であることのメリットもあるということです。
税法でも個人事業=小規模事業体であることを前提としており、
その前提であれば、厳しくしても取れる税金が少ないですし、
自主申告制度を広めるため・成立させるために、
先方としても教育はマストとしているわけです。
一方の法人経営は、やはりそれなりの規模感を求められます。
資本金は少なくスタートできるようになっていますが、
間口が広がっただけで税務的にやることは昔から変わっていないのです。
(もちろん税務署に相談に行けば申告書の書き方は教えてもらえますが、
税務署が開催する説明会などは行っていません。)
この辺り、税理士としてはどうかなーと思う部分もあります。
長くなりましたが、最後に少しだけ裏話的なことを。
税理士目線としておいて、なぜか社保の話からスタートしましたが、
それぐらい社保デメリットは目立ちます。
何より税理士以外の専門家の業務範囲なので、
本来は税理士は立ち入ってはいけないのですが…
代行の名のもとに、税理士が手続きしちゃっていることも、ままあります。
(税理士としては直接的に報酬をもらえないことも、またもどかしいのです)
この辺りは次回以降に記事にしたい年末調整と併せて、法改正が待たれる事項です。
今回はこの辺りで。
次回からは各項目について詳細を説明していきます。