法人設立-3 公私区分の明確化 厳密にやるか、ざっくりやるか
以下の記事(今回は法人設立-1のほう)の内容の補足記事になります。
※最近いらすとやさんをお力を借りはじめました。
補足といっても内容は濃い目です。
なぜ、公私区分が明確=メリットなのか
→法人通帳・法人カードでの出費=法人の経費、と説明しやすい
法人で事業を行う以上、法人のお金から必要な経費を支払う
というのが一般的な考え方になります。
その原資は個人が出資した資本金や、銀行からの借入金だったりですが、
いずれも「法人のお金」であることには変わりません。
逆に言えば「法人のお金」で個人的なものを買ったり、
飲み食いや愛人へのプレゼントなどに使ったりしたら、
通常の会社であれば経費の使い込み、度が過ぎれば横領なわけです。
なので、税務署(の調査員)からしても、
法人の持ち物である法人口座・法人カードからの支払いをチェックした際に、
大部分が法人経費として問題ないものが処理されていることが分かれば、
これらは「法人の経費なのであろう」というバイアスが多少なりかかります。
(注)逆にいえば、調査中に「法人のお金」から個人支出が一定数あることが分かると、
「他にも個人支出があるのでは?」と心象が非常に悪くなります。
調査員も人間ですし、仮にAI監査になってもそのように教育するでしょう。
まとめると、ある程度正しく法人口座・法人カードから経費を支払っていれば、
基本的にはそれらは法人の経費であると説明しやすい、ということになります。
公私区分を明確にすることのメリット・デメリット
メリット:税務調査での心象○、長期的には相続対策時に役立つ
まず、個人経費が入っていないことは、税務調査での良い印象への大きな一歩です。
逆に、個人経費を入れてしまう会社は世の中多いです。金額の寡少あれど。
また個人経費を法人で立替え、精算もしなかった場合、
法人からみれば役員への貸付となり、銀行からみると
「銀行→法人→個人」とお金が流れているようにも見えてしまい、
大きなデメリットとなります。
では相続対策とは?
よくあるのが、法人の経費を個人立替としてしまうこと。
これは法人からみれば役員からの借入なのですが、
個人からみると「法人への貸付」となってしまいます。
そして、法人への貸付も相続財産に含まれるので、
他に相続財産があるような方は注意が必要です。
この点、公私区分を明確にしていれば、
いらぬ相続財産の心配をせずに済みます。
デメリット:とにかくメンドウ!
ここまで言っておいて何ですが、
厳密にやろうと思うと手間であることは事実でしょう。
そのために大きな会社では経理部、中小でも経理担当があるぐらいで。
つまり人を雇うぐらいの手間だと思ってください。
ただし昨今は会計ソフトも進化しており、
法人口座・法人カードで決済さえすれば、
法人の会計データに自動で読み込んでくれますので、
残りは現金決済が主な消耗品や打ち合わせ・接待の食事代をどうするか。
できるだけカードや連携する電子マネーで精算できれば…
ただし相手先の受け入れ状況もあることなので。
対策としては、一部現金払いは役員借入としてある程度溜まったら精算、
という折衷案を用いることは全く問題ありません。
ただし役員借入・貸付とも長い期間存在してよいものではないので、
基本的には期末時点でプラマイゼロであることを目指してください。
少し長くなりましたが、
役員貸付け・借入れは根深い問題でもありますので、
次回もう少し掘り下げたいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。
<次回の目次予定>
自宅家賃・社宅問題
役員報酬、払えないので未払い計上問題
個人から設備購入!と思ったら借入もセットでした問題
なぜ税理士は「役員貸付」に目くじらを立てるのか