法人設立-4 公私区分の明確化 役員貸付・借入の発生原因
以下の記事の内容の補足記事になります。
もはや補足の補足ですが…
- <おさらい>なぜ役員貸付・借入は無くした方がいいのか
- 自宅を社宅とするケース
- 役員報酬、払えないので未払計上のケース
- 個人から設備購入!と思ったら借入もセットでした問題
- <最後に>役員貸付・借入が無いか、今一度チェックを!
<おさらい>なぜ役員貸付・借入は無くした方がいいのか
役員貸付・借入は、どちらも、以下のような問題があります。
役員貸付:銀行からの印象が悪くなる
役員借入:相続財産になる
また、特に役員貸付は以下の税務デメリットもあるので、
残高はなるべくクリーンであることを目指しましょう。
個人貸付の税務デメリット
前述の通り、銀行への印象デメリットもあるのですが、
税務的には貸付に対する未収利息計上問題があります。
詳細な利息計上方法については↑をご確認ください。
なお役員借入の状態では未払利息の計上は一般的にはありません。
なぜ貸付・借入でこのような違いがあるかというと
・法人は営利目的
→受取るべき利息は計上すべきという根底概念があり、
法人の税務調査では(カンタンに税金が取れるので)指摘対象となりやすい
・一方の個人は必ずしも利益追求ではないので、
法人から利息を取らなくても、特段の税務的な指摘は無い
※所得税では、貸付利息は総合課税されるため、高額納税者にはデメリットのみ
ちなみに個人貸付については知人や従業員に対する貸付も
同様に未収利息を計上すべきとされますのでご注意を。
おさらいは以上として、ここから役員貸付・借入の発生原因を見ていきます。
自宅を社宅とするケース
多くのフリーランスの方が、ご自宅=職場でしょう。
法人で自宅家賃を経費にする方法としてよくあるのが、
法人で家を借り、個人に自宅として貸す社宅形式です。
※個人で借りている自宅を、法人に貸付ける方法もありますが
個人で確定申告(不動産所得)が発生してしまうので一般的ではないかもです。
本来であれば、毎月個人から家賃を貰うことが必要ですが、
家賃精算を忘れてしまうと、法人が、個人から収受すべき債権
つまり役員貸付が生じます。
役員報酬、払えないので未払計上のケース
一時は役員報酬を毎月払っていたが、事業の悪化等で現状はキャッシュがない
などの事情で、役員報酬の支払いを後回しにすることもあります。
払えない役員報酬(の金額設定)が税務上認められるか?の
そもそも論は別として、役員報酬の変更時期は年1回と少ないこともあり
ある程度やむを得ず発生してしまうケースではあります。
このケースでは法人→役員への未払金=役員借入が増加します。
個人から設備購入!と思ったら借入もセットでした問題
個人事業が好調だからこそ、法人化するメリットがあるものですが、
事業で使っていた設備がある場合、法人に移転させる必要があります。
(移転させない場合、個人事業の収入とされてしまい、法人化メリットが得られない可能性大です)
その設備を買う際に銀行借入などがあった場合、
設備代金 or 借入残高のどちらが高いか?により
個人との金銭のやり取り方法が変わります。
例えば設備代金10百万円、借入残高9百万円であれば、
個人としては10百万円の設備売却収入を得る分、
借入返済9百万円は法人にお願いする形となり、
結果として個人が受取るべき金額は10-9=1百万円とすべき、となります。
そして上記代金のやり取りをしていなければ役員借入が増加します。
※法人で消費税還付を受けたい場合の注意点
設備代金10百万円について、
金銭やり取りの証左を残すことをアドバイスすることがあります。
(個人・法人での売買が正式に行われたことの証拠を残すため)
この際に借入の精算が漏れてしまうと、
個人の返済すべき借入を、法人が肩代わりする形となってしまい、
法人が個人から回収すべき債権=役員貸付が生じる点に注意してください。
<最後に>役員貸付・借入が無いか、今一度チェックを!
今回の記事でお伝えしたいのは↑のことです。
残高があって得することはなくとも、損することはありえますので。
とかく税金を減らそうと思うとP/Lばかり気になってしまいますが、
この機会にB/Sをチェックしておくことから始めていただければ幸いです。
本日は以上です。
<次回以降の予定>
本当に法人設立はお得なのか?
→均等割、手続き報酬など織り込むべき費用
→「費用」にならないけど…メンドウなこと
法人への設備移転orレンタル、どちらが有利?